FIF フューチャー イノベーション フォーラム

FIFはさまざまな企業と協力し、社会貢献活動を行う団体です。

プレスリリース

第1回 未来を切り拓くIT~デンマーク・エストニアにおけるIT活用戦略
イノベーションワークショップ2013「イノベーションで日本を強く」

 フューチャー イノベーション フォーラム(略称=FIF、代表=牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャーアーキテクト株式会社会長兼社長)は、7月22日(月)にイノベーションワークショップ2013「イノベーションで日本を強く」の第1回を開催しました。
 本ワークショップは次世代リーダーの育成と企業間の交流を深める場として、2007年にスタートしました。本年は「イノベーションで日本を強く」をテーマに全4回をつうじ、ITを活用しながら国力をあげる海外の事例を学び、日本におけるイノベーションの可能性を探ります。

【開催概要】
講演者: フューチャーアーキテクト株式会社代表取締役会長兼社長 金丸恭文
テーマ:「未来を切り拓くIT」~デンマーク・エストニアにおけるIT活用戦略
日 時: 2013年7月22日(月) 18:00~19:15
会 場: フューチャーアーキテクト株式会社 会議室

【講義概要】
私が所属する政府の規制改革会議「健康・医療ワーキンググループ」でも高齢化にともなう医療費増大は国の重要課題となっており、IT総合戦略本部においても安倍総理自身が先頭に立ち「国のIT戦略はどうあるべきか」、「ITでどのように世界と戦える日本をつくれるのか」ということをテーマに議論を重ねている。
「医療」や「教育」といった分野は、一国民として個々が真剣に考えるべきテーマだと考えている。そのヒントとなるべく、昨年の秋にデンマークで視察した「医療」「教育」現場でのIT活用の取り組みを紹介したい。

◆デンマークのICT政策
世界経済フォーラムによるICT競争力ランキングや「国民幸福度」「IT競争力」「電子政府」といった各種調査において、デンマークはすべて日本の上位に位置している。 デンマークはICTを国家戦略の中心として捉え、「医療」「教育」分野に特に力を入れITを活用しながら国民に充実したサービスを提供している。
EUが統合された際、EUは「知識(教育)」と「ICT」に注力した社会経済を目指すこととなった。デンマーク政府も1990年代半ばから行政のデジタル化を推進し、2000年からデジタル化による抜本的な「行政効率化」を目指してきた。その実現にあたり、デンマークでは、財務省のなかに政府を横串で見るデジタルタスクフォース(現デジタル庁)を立ち上げ、財務省の人間が電子政府関連の予算を掌握し、厳しい進捗管理のもと国家のデジタル化を進めていった。

◆デンマークの医療
デンマークの医療は、中央省庁が全体の方針を決定し、実行は各自治体が行っている。患者と医療従事者の双方にとってより良い医療体制が取れるよう、医療従事者は患者の病状や治療に関する情報をデータベースに蓄積し、全国どこからでも参照できるようになっている。
1994年に病院、薬局などの医療従事者、ヘルスケア事業にかかわる民間企業などが協力し、情報を共有するネットワークをつくった。2003年にはそのなかに市民と患者が入り、電子カルテの共有ができるようになった。2011年には人口の85%の情報が登録され、利用できるサービスは病院予約から処方箋の更新、治療に関する学術記事の提供など広範囲にわたる。また、ITを活用した医療サービスとして、「オンラインリハビリテーション」や「ホームモニタリング」などの遠隔医療も行われている。例えば、1人の先生が20人の患者を相手にテレビ電話を活用しながらリハビリを指導することで、リハビリ療法士および患者双方の移動時間・費用を削減するなど、ITを活用した効率の良いサービスを提供している。

◆デンマークの教育
デンマークでは、「デンマーク語」など自国の文化や歴史を重要視しながらITという武器を使い、将来、世界と競争していくことを意識した教育が行われている。たとえば、子どもたちは低学年からノートPCを持参し、問題を解くときもPCを利用している。また、日本のような記憶力重視の教育ではなく、個々の得意分野が伸ばせるよう、先生はクラスの一人ひとりに異なった問題を与え、考えることを課している。さらに、体を動かすこととITに触れることを組み合わせ、問題を解いていく「デジタル・ターザン・プログラム」といった授業もあり、幼少期からITリテラシーを高める教育がなされている。また子どもの自尊心を育むため他の子どもと相対比較しない教育をしている。

◆エストニアのIT政策
ロシアから独立したエストニアは林業以外に大きな産業がなかったため、1996年~2000年にかけてITとバイオを産業の中核としたプロジェクトを実施した。エストニアでITが進展した理由は、国会議員にITの理解者が多く、情報基盤確立の重要性が正しく認識されていたことと、国民から理解を得られたことが大きい。プロジェクトの推進にあたっては、デンマーク同様、まず、IT立国の基礎として教育分野における革新的なパラダイムシフトを行い、「教える」「学ぶ」プロセスのなかにITを広く取りこんでいった。また、医療分野においても2010年に処方箋の電子化を導入し、2013年を目標に公共サービスのデジタル化を目指している。
エストニアでは「国民IDカード」が広く普及しており、約135万人の人口のうち2006年末までに100万枚以上のIDカードが発行されている。IDカードを保有していれば生まれたときからの健康情報をオンラインで確認できるほか、EU内パスポート、免許証や保険証の替りとして使うことができ、公共交通機関のチケット購入や電子投票、インターネットバンキングといったあらゆるサービスが利用できる。このように利用用途が多岐にわたるため、高い普及率を誇っており、こうしたサービスの利用率も増々高まっている。

◆日本の課題と将来
現在、日本では、行政サービスの年間ITサポート費用が5,200億円かかっており、うち80%の4,200億円が保守運用に使われているため、攻めの投資ができないジレンマを抱えている。今後、現状ある行政サービスシステムの統合・削減を行い、その保守・運用費を攻めの投資に転嫁できるよう具体的施策を政府のIT戦略本部で議論している。
また、医療では「電子カルテ」が病院ごとに所管されており、使われているシステムも異なるため治療情報が新薬開発などにうまく活用されていない。今後は「電子カルテ」のみならず「レセプト」なども一元管理することで効率的な医療サービスの提供や新薬開発に役立て、世界との競争力を高めていくべきだと考えている。
最後にデンマーク、エストニアの事例でも明らかなように日本の教育におけるITの活用はかなり遅れている。世界では教育のなかにITをうまく取りこみ、イギリスのように小学校からプログラミングの授業を始める国もあり、ITリテラシーを持つことがスタンダードになりつつある。これからは日本も教育のなかにITを取り入れ、世界と競争できるITリテラシーを持つことが必要である。
また、企業においても様々な仕事がITに置き換わっていく傾向はつづいていく。だからこそ、私たちは自身のITリテラシーをさらに高めるか、その道の「匠」のようなITを上回る深い知識と情熱をあわせもった付加価値を身につけなければならない。

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